MPMS

海洋コアセンターに設置されている。古地磁気学研究室の小玉先生が導入された装置。今は山本さんが管理・調整をしている。全国共同利用になっているので誰でも利用が可能である。学内利用の場合は1日1000円が必要である。

5Tまでの磁化,交流磁化率の測定が可能である。物性研究では通常DC測定が行われているが,このシステムにはより高感度のRSO測定ができる。海洋コアセンターまでは理学部の朝倉キャンパスから20kmくらいあり,自転車で1時間20分かかるが,マシンタイムが密集しているので,実験はときどきなのでいい運動になっている。

高知大学方式GM冷凍機

2008年に発明した装置。重い電子系を行う上で1K以下の極低温は不可欠である。ところが高知大にはヘリウム液化機がないために液体ヘリウムを購入しなければ1K以下の実現は出来なかった。ヘリウムは希少資源のため液体ヘリウムは非常に高く,数回の実験で年間の予算を超えてしまう。そこで市販の冷凍機を改良して簡単に1K以下を到達する方法を発明した。これにより,物性研究に液体ヘリウムは不要であると宣言してもいい段階まで来ている。写真は光の実験に利用できることがわかってにっこりしている田島君。

アーク炉

松村先生から譲り受けたもの。重い電子系の実験研究を行う上でアーク炉は不可欠の存在である。名古屋に大型のアーク炉があり,佐藤さんが持っていってもいいよと言ってくれたのだが運送費が30万円にもなるという。松村先生にそのことを話すと「アーク炉ならあるので使ってください」ということで,譲り受けたのが右の写真のもの。なんと,溶接電源を利用して自作している。松村先生はNMRの専門家のはずなのにこんなことまで出来るんだ,と驚いてしまった。高知大学の物性グループは「ものづくり」に特徴があるかもしれない。

トリアーク単結晶引き上げ炉

名大で井上さんが作ってくれた自作のトリアーク炉を高知大に持ってきて,ボール盤を改良した回転引き上げ機構をつけたもの。回転引き上げ機構は2005年度に卒業した渡邊君が作ってくれた。ボール盤は名大の極低温実験室の中庭に捨ててあったボール盤を拾ってきた。トリアーク単結晶引き上げ炉は20世紀には重い電子系の研究では標準的な炉であったが,より安価に簡単に単結晶が出来るフラックス法が普及し21世紀になって余り使われなくなった。ネッキングに職人技が必要でなかなか面白かったんだけど。この炉も5年以上使ってない。

切断機

刈谷先生から譲り受けたもの。試料を作った後は切断しなければならない。切断機というのは意外に高価で500万円くらいはする。しかし予算もほとんどないのでどうしようかと思っていたら,3年実験室にそれらしいものがあるではないか。松村先生に聞いてみると「退官された刈谷先生が買われたものですよ。X線結晶学の講義で毎週来られるから聞いてみるといいですよ」と教えてくださった。講義前の刈谷先生にお願いしたところ,譲ってくださったばかりでなく使い方を丁寧に教えてくださった。

研磨機

これも刈谷先生から譲り受けたもの。試料を研磨するのは単結晶の整形とEPMAの試料準備である。前者は手製の研磨機で十分だが,後者は#10000相当まで磨く必要があるのでこの研磨機を使っている。海洋コアセンターでも研磨することはもちろん出来るが,分析の時間が短くなってしまうので,理学部である程度磨いておいた方がいい。左側の研磨機#600程度まで荒削りをして,右側の研磨機でダイヤモンドペーストを使って鏡面研磨をする。あまり上手ではないので3時間くらいかかってしまう。

TG/DTA

加藤さんが着任されたときに借金をして購入された示差熱質量分析装置。試料作りには相図が大変に有用であり,それを作るのに大変な威力を発揮するものである。かなり昔に使わせていただいたことがあるが,アルゴン雰囲気中では酸化してうまく行かなかった。それではと思い,真空に出来るようにしてみたが,それでも酸化する。加藤さんは私の実験のためにわざわざ試料ケースを少ない予算から購入してくれたのだが,残念だった。そのうちまた挑戦してみたいとは思っている。

ベクトル磁化測定器

概算要求で導入した7Tまで発生できる横磁場無冷媒横型マグネットを使って,ベクトル磁化測定装置を自作した。市販のVSMとは異なりモーターで試料を振動させるために圧力セルなどの重いものでも振動させることが可能である。ピックアップコイルを磁場方向と垂直方向の2組(計8個)配置し,上下させるモーター,回転させるモーターを取り付け,Linuxのシステムで完全に自動化している。ありがたいことで,これらのモーターは全てオリエンタルモーターから購入できる。総額で50万円くらい。

金工室

高知大学に来て驚いたのは金属工作室がなかったことである。旋盤は1台あったのだが,「般若鉄工所」製作のもの。ブレーキもなくちょっと負荷をかけると止まってしまうものだった。走行しているうちにベルトが切れて旋盤の分解修理をすることになった。このときに助けてくれたのが当時水熱化学研究所で技官をされていた浜田さん。浜田さんはなんと戦時中に旋盤を作る会社で働いていたことがあるというのである。浜田さんの指示通りに分解して組み立てたところ動くようになった。しかしセンターがかなりぶれており,浜田さんは「もうだめだね」という。しかしこれしかないので仕方ないんですよといいながら使い続けて高知大学方式GM冷凍機の製作に到達したのである。


その後金工室の必要性を痛感していたところ,川村先生から加藤さんに理学部1号館の改築に伴い増築するから物理から何か要求がないかと問い合わせがあったらしい。加藤さんは金工室はどうでしょうかと私に話を持ってきてくれて川村先生に要求書をだしたところ認めていただいて,立派な部屋を準備していただいた。そこに,古い旋盤を持っていくことになるのだが,せっかくだから本格的な金工室を作ろうと思い,学長裁量経費に出したところ2年目で認めていただき,右にあるように旋盤,フライス盤,コンターマシンを導入することが出来た。これで少なくとも私が関係する工作で出来ないものはほとんどない。欲を言えば切断機が欲しいがそれは余裕ができてからでいい。


工作に関しては昔名大で宇宙物理学の国枝さんに言われたことを思い出す。「企業では研究者が工作をしては行けないんですよ」。これは概念的にはよくわかる。工作は大学を出てなくても出来るからだ。高い人件費を払っている研究者に工作をさせることはむだだ。そのとき私は猛反発したが国枝さんが正しいことはわかっていた。しかし,実験は作りながら思いつくことが良くあるので自分で作るというのは非常にいいことがあるのです。それになによりも,技官がいないし,外注するにも予算がないので,経済的な点で自分で作らなければ研究が出来ません,

EPMA

海洋コアセンターに設置されているものを時々利用させてもらっている。フラックス法で作った場合,どういう組成の試料が出来ているかわからないので,本当は毎回試料分析することが必要である。しかし,分析が面倒なのでたまにしかしない。しかもいつも学生を連れて行き,学生が使い方を覚えてもらって,私はうろ覚え。次に利用するときはその学生はいなくなっていて,別の学生を連れて行くという繰り返しで,いつまでも一人で使えずに担当の松崎さんに迷惑をかけている。2015年度は是非使い方をマスターしようと決意している。

フラックス法

左が電気炉で右側が遠心分離機。いずれも市販品で100万円程度である。フラックス法は名大の陳さんに教えていただいた。陳さんはもともと名工大の坂本先生のところの大学院生だったがそこで試料作りを一生懸命やっておられた。陳さんの粘り強さと実験センスについては坂本先生は絶賛されていた。私は高知大に移ってから陳さんについて1週間修行した。それをヒントに第0期生である安並君と試行錯誤して単結晶育成方法を確立していった。そのおかげで単結晶試料が出来るようになった。

実験装置

アクリルワン

これも刈谷先生から譲り受けたもの。EPMAの実験をするために試料を紫外線で硬化する樹脂に埋め込み,この装置で紫外線を照射し固める。約20分。こうして作ったものを上の研磨機で鏡面にまるまで磨く。これは口で言うのは簡単だが結構大変である。

蒸着装置

EPMAを行う前にカーボンを蒸着する必要がある。直径6mm程度のカーボン電極の先端を直径2mm程度,長さ6mmに細めたものと30°くらい斜めにしたものを接触させ,4×10^-4 Pa程度まで真空引きした後,40A程度の電流を流して蒸着する。蒸着量は参照としておいてある白いタイルの色を見て判断する(写真に少し見える)。どのくらいの色で土の暗い蒸着されたかは見本がある。この装置は大変丁寧にマニュアルが準備されており,素直にそのまま実行すれば良い。蒸着の実験で面倒な掃除も最小限であるのが嬉しい。これも松崎さんのおかげです。